第15回 え、あれってローカル番組だったの?


 

金曜の夜。11時過ぎた、慌ててテレビのスイッチをON。
……あれ、なんでやってないの?
そう関西の人はおわかりだろう。関西で視聴率No.1番組。
「♪タッ、タ、タラン~」馴染のイントロで始まるあの長寿番組。

「探偵!ナイトスクープ」

依頼者(一般視聴者)の無茶な依頼や無理難題に、探偵(芸人さん)が悪戦苦闘し依頼を解決していくと言う番組。「電子レンジで爆発卵を作りたい」「マネキンと結婚したい」という爆笑の依頼もあれば、「戦場からきた父の手紙を解読したい」という涙必須のVTRもある。
笑いと涙を体験できる、あんなに面白い番組。なんで東京でやってないの?

ナイトスクープだけじゃない。東京に来て「え、あれって関西ローカル?こっちで見れないの?」と悲しくなることが多い。

例えば、
「痛快!明石家電視台」
「ちちんぷいぷい」
「せやねん!」
「土曜はダメよ!」
「たかじんのそこまで言って委員会」

……嗚呼、大好きな番組たち。(ほかにもいっぱいある)
東京で見ることが出来ず、あたしはかなりストレスをためている。

なんだろう、大阪の番組は空気がゆるくて見ていて和むのだ。
「ちちんぷいぷい」という平日午後の情報番組はなんか、和み系番組の筆頭だ。〝のほほーん〟という言葉が良く似合う。街の若者がアポなしで自宅に電話を掛け「今日の晩ごはんなに?」と聞くコーナーがあったり、夜中の終電間際ほろ酔いのサラリーマンに声を掛け熱く語ってもらうコーナがあったり。見ていて「なんかええなぁ」ってそんな番組だ。

そう関西ローカルの特徴をもう一つあげるなら、〝一般人がよく出てくる〟ということ。「探偵ナイトスクープ」「ちちんぷいぷい」もそうだが、「明石家電視台」の観覧客や、「土曜はダメよ!」のコーナーの「浪速コレクション」のおばちゃん達。
このテレビに映る一般人が面白すぎて笑ける。時に芸人を食っているほど。
この前東京の人に「ケンミンSHOWで見たんだけど、大阪の人はみんなノリツッコミできるって本当?」と聞かれた。
……うーん。否定はできない。
大阪人は上手いボケが来たらツッコミをするのは礼儀だと思っている。サービス精神旺盛な人種なのだ。

話は変わるが……
植村花菜さんの「トイレの神様」の歌詞の中に「新喜劇 録画し損ねたおばあちゃんを 泣いて責めたりした」というのがある。このフレーズの絶妙さ、東京人には分からないだろう。関西人なら誰しも共感できる歌詞だ。
あたしが小学生の頃。土曜は午前中だけ学校があって、4時間目が終わったらダッシュで家に帰っていた。ダッシュしないと12時54分スタートの番組「よしもと新喜劇」を見逃すからだ。帰ったらお母さんがお昼を用意してくれてて、(メニューはだいたい焼きメシか焼きそばだった)それを食べながら新喜劇を見る、というのが毎週のお決まりだった。そんな当たり前の日常を東京人に話してみるが「へー」という反応。
新喜劇で育ったあたしたち。東京の人は土曜の昼は何見てたんだろう。

東京人とテレビの話をしているとき、よく分からない言葉が出てきた。
「昨日ブランチでさー」
ブランチ?なんですか、それ。ご飯のこと?
……どうやら土曜日にやっている、東京ローカルの情報番組
「王様のブランチ」
のことらしい。
「王様のブランチ」??……けっ、さすが東京。気取った番組名つけますねー。

そういえば東京ローカルを知らない。どんなもんやねん、と土曜朝(いつも昼くらいまで寝てるのだけど)頑張って早起きしてテレビをつけた。
衝撃だった。

……え、谷原章介が司会をしている!!!
ドラマや映画にしか出ない俳優さんだと思っていたので、「では、次のコーナーです」と健気に番組進行している姿は受け入れがたかった……。(っていうか谷原さんがセリフ以外で喋っている姿を初めて見た)
そして女性司会者は……優香ですか!
なんともまあ、お洒落でさわやかな2人!
ツーショットが綺麗すぎる!
……これが東京ローカルなのか!と、衝撃で目が覚めた。

もちろん番組の内容もスマート。
びっくりしたのはレポーターが、カワイイ女の子であること。
ロケに行って情報をつたえるアイドル系女子たち。なんてキュートでいちいちカワイイんだ!
大阪の番組だと、まずこの役割は芸人さんがする(シャンプーハットとか千鳥とかね)。
笑いを交えつつ、やんわりロケが進むのが特徴だ。

「ブランチ」はスタジオのコメンテーターたちもなんかシュッとした人が多い。発言も知的でスマート。
紹介された商品をけなしたり否定することは、まずない。そしてゲストをいじったり、話にツッコんだりと言うこともない。
大阪だとコメントする人たちも芸人さんで(たむけんとか未知やすえさんとかね)なんか適度にオモロイことを言っている。出演者同士でツッコんだり、掛け合い漫才が始まったり。そんな番組を見て育ったせいか、どうも「ブランチ」は馴染めない。

そして最後に。
リモコンのチャンネルにいまだに苦戦している。
旅行先のホテルでテレビをつけると、何チャンがどの放送局なのか分からず困っちゃう、アレだ。
「お、やべ。もう9時だ」毎週見ているドラマを見逃すかい、と思ってテレビをつけるが、何チャンなのか分からずいつもてんてこ舞い。チャンネルの番号を順番に押している。だから冒頭30秒は見逃すことが多い。そろそろ覚えなきゃ。
日テレ、4チャン
テレ朝 5チャン
TBS 6チャン
このへんが大阪と違うのでややこしい。
よし、そろそろ覚えるぞ。

第14回 地震こわい


 

大阪のみなさん、東京は地震が多いです。

あたしが上京したのは6月。
本当は春になったらすぐに(4月くらい)上京する予定だったのだが、震災が起きたことで延期した。それでも「なんで今の時期に東京に行くんだ」「あと2、3年待ってみたら?」と周りのみんなは心配。そりゃそうだ。テレビでは震災関連のニュースが続いているし、放射能の心配もある。

頃合いを見て、東京に住んでる友人に聞いてみた「東京どうでっか?」と。
「もう普通だよぉー」と返事がある。
物流も通常通りだし、電車も普通に動いているし、目立った混乱はないよーとのこと。

ということで東京にやってきた。

ええーと?……どこが普通なの?
大阪のみなさま、関東は揺れまくってます。地震だらけです。ものすごい短いスパンで地震が発生してます。(東北地方、震源地にお住まいの方はもっと怖い思いをされているかと思います)

「もう普通だよぉー」
というのはつまり、「地震はしょっちゅう起きてるけど、それが普通だよぉー」という意味なのか。……いやいやいや、それは普通じゃない!
「もう慣れたよねぇー」
こらこらこら。地震に慣れてたまりますか。

特に東京に来たてのころ、恐怖心が強かった。
右も左も分かららぬ東京の町。今いる場所が、海から近いのか遠いのかも分からない。
関東の地図を正確に思いだせないあたしは「震源地・茨城」「震源地・千葉沖合」……といわれてもここから遠いのか近いのかも分からない。

それにすぐそばに家族や友達がいない、というのがとにかく怖いのだ。周りは得体の知れない東京人だらけ。なにか起きても頼れるのは自分だけ。
もし直下型の大きいのが来たらどうしよう。毎日ビビりながら生活している。
上京して9か月経った今も、地震に慣れることはまずない。

アイフォンで「ゆれくるコール」というアプリを入れている。
なまずのアイコンで有名な、緊急地震速報通知アプリだ。自分の住んでる「地域」と、警報が鳴る「震度」を設定できて、地震がくるときに警告音がなるというアプリだ。
東京に引っ越ししてから「杉並区」「震度3」に設定した。
……なんだこれ、ジャンジャン鳴るんですけど。
大阪に設定していた時は警報が一回も鳴らなかったのに、東京に設定した瞬間に鳴りまくっている。

通知音はNHKの地震速報と同じ音で「チャンチャーン・チャンチャーン」というサイン音。仕事をしているとき、料理をしているとき、突然鳴り響く「チャンチャーン・チャンチャーン」この音がとにかく怖い。怖すぎる。音が鳴るたびにあたしは身構え、命の危険を感じている。
ガタガタガタ……
おぇーー!怖えぇーー!
揺れが終わっても、しばらくは落ち着けない。

アプリに限らず、最近の携帯はどの機種も地震速報の機能がついているらしい。
電車に乗っているときに地震が来て、乗客たちの携帯が一斉に鳴りはじめたのにはびっくりした。
「ビー・ビ―」「チャンチャーン・チャンチャーン」「ウーウー・ウーウー」
みんなの携帯が一斉になるこの現象。それでも電車は普通に走っている。焦ったあたしは非常停止ボタンを押すべきかすごく迷った。が、周りの東京人は平常心。幸い大きな地震ではなかったので、大事には至らなかった。

困ったことに、緊急地震速報が鳴った時点では、どの規模の地震なのかが分からないのだ。
(設定した震度はあくまで予測震度なので、実際には震度3以下でも警報がなる)
毎回毎回警報が鳴るたびに「……だ、大地震かも」と身構え、スナイパーに狙われている級の、恐怖があたしを襲う。
「チャンチャーン・チャンチャーン恐怖症」になってしまった。
……毎回ビクビクしていては心臓に悪いので設定を「震度4」に変えた。実際に周りの東京人の人たちも、あまりに鳴りまくるので設定を「震度4」にしている人が多いらしい。
ちなみに「震度4」に変更してから一回も警報は鳴っていない。震度3と震度4は、そんなに規模が違うのだろうか。
こんど警報音が鳴った時のことを思うと、恐ろしい。

そして地震のとき建物が揺れる、ギシギシ音が怖い。
あたしが住んでいるマンションは築年数が割と経っている。どこかの部屋の人がドアを乱暴にあけたり、階段を勢いよく降りたりするだけでギシギシと音がなってしまう。
普段なら気にならない程度の生活音なのだが、テレビや音楽をつけずに生活していて、さらに地震に対する恐怖心がうえつけられていると、気になって気になってしょうがない。
物音がするたびに「地震?!」と身構え、周りをキョロキョロしてしまう。天井からぶら下がっている電気のひもを目安にしているのだが、大抵はひもは静止したまま。
つまり、地震が起きているという錯覚に陥っているのだ。

最近はあまりにもビビりすぎて、自分の心臓の鼓動で錯覚地震を起こすようになってきた。
ベッドで横たわっているとき、ソファーに座っているとき。スプリングやクッションみたいなふわふわしたものの上にいるときに、この錯覚を起こすことが多い。
ドクンドクンと脈打つたびに、「ゆ、揺れてる?!」と思って身構えてしまう。
どんだけ鼓動が激しいねん、とツッコミが入りそうだがこれマジな話。
さらに追い打ちをかけるように、マンションの壁がギシ……というもんなら、それはもうかなりのパニック。

調べてみると、こんな風に錯覚地震を起こす人はどうやら多いようだ。その大半は精神的な不安が原因だそうだ。あたしも心配し過ぎなのかもしれない。
(ただし平衡感覚を失う病気だったり、貧血だったりで地震と錯覚するケースもあるらしいので、不安な方は病院に)
これからは、もうちょっとリラックスして東京生活を送りたいと思う。

明日3月11日で震災から一年……。
こんな記事を書きましたが、被災地の皆様のことを思うとあたしの心配なんか小さいもんです。
地震や生活の不安がなくなって、被災地が一刻も早く復興することを願っています。