全国どこにでもある本屋&レンタルショップ。
青字に黄文字の看板と言えば……そうお馴染みの〝TSUTAYA〟
シャム双生児のように顔が並んだシンボルマークは、よく見ると相当怖いのだけれど、本&映画&音楽好きの人にとってはなくてはならないエンタメスポットである。
「代官山のツタヤは、そんじょそこらのツタヤとは違う」
と誰かが言っていた。
いやいや、違うっつってもツタヤは所詮ツタヤでしょ……と舐めてかかっていたのだが、近くまで来たついでに寄ってみたそこは、確かにそんじょそこらのツタヤとは全然違って、ちょっと感動だった。
かなり気に入ったあたしは、先日また、休みの午後のぽっかり空いた時間を使って行ってきた。
*
さて出掛ける前に……。
恒例となりつつある、〝服選び〟だ。
過去、青山系ファッション、巣鴨系ファッションに散々迷ったあたし。今度は代官山にふさわしい服を選ぶべくクローゼットを開けた。街行く人たちはみんなどんな格好をしてたっけ……と何度か行ったことのある代官山を思い出す。
代官山の人たちは……そう、カジュアルな服を着ている人が多い(それも高級な方の)。
帽子、シャツ、セーター、……そんなイメージ(ただし高級な方の)。
髪の毛は、ツヤツヤのストレートの人が多い(これ偏見)。
あと……そうそう、前回訪問した時にビックリしたことがある。
それは〝生足〟ガールの多さ。
11月の寒い日だったのであたしは防寒バッチリに黒タイツを履いていったのだけど、代官山女子たちのショートパンツやスカートから伸びるおみ足は……生足だった!
そう言えばピーコさんが言っていたっけ、「お洒落は我慢」だと。うん、じゃあ、あたしも頑張るか……と、衣装ケースからショートパンツを取り出し、タイツを履かずに足を通す。
……。
寒っ。
無理。普通に無理。
2月の生足、それは自殺行為。部屋の中でも堪えられないのに、外に出るなんてありえない。だいいち、真冬に生足とか……見た目がアホ?
寒々し過ぎて、周りの方々のご迷惑になる。
こないだ見た生足ガールたちはベージュのタイツを履いていたんだ、そう自分に言い聞かせ、100デニールの黒タイツを履き、代官山へ向かった。
*
代官山は、なんか雰囲気が代官山だ。
他の街にはない、独特の空気や色合いがある。
どこが他の街と違うのか、そんなことを気にしながら歩いてみて分かったことは、代官山のショップの8割はコンクリートの打ちっぱなしで、全面ガラス張りだということ。
三方向がガラス張りの壁になってたりして、とにかく丸見え。壁や柱がないのだけど、構造上大丈夫なんだろうか?こないだのロシアみたいに隕石が落ちて着たら、えらいこっちゃ、衝撃波でガラスが木端微塵、代官山の被害は相当だろう。
そんなありもしない想像をしながらショップを覗き、すれ違う代官山女子達の脚元がタイツであることに安堵しつつ、テクテク歩いていると目的地である代官山ツタヤに到着した。
やっぱりここは、そんじょそこらのツタヤとは違うくて、すごい。
御存じの無い方に説明すると……代官山ツタヤは、Tサイトという大きな公園のような商業施設の中にある。
このTサイトという施設自体が楽しい!大きな木が植えられてて、お散歩してるだけで気持ちいい。点在するお洒落なお店(もちろんガラス張り)はレストランだったり自転車屋さんだったり文房具店だったり。ドッグラン付きのペットショップでは犬の美容院も併設されていて、チリチリの毛のワンちゃんたちが、トリマーたちにチョキチョキされているのをガラス越しで見ることができる。さすが代官山というべきか、ワンちゃんたちはみんな大人しくて、品がいい!
さてそんな素敵な施設の中にあるツタヤ。それはもう洗練されまくっている。
巨大なBOOKコーナー、レンタル映画コーナー、音楽コーナー、あと高級文具コーナー。
とにかく店内はお洒落で広い。
本が間接照明に照らされてるし、そこらじゅうに本を読むためのお洒落な椅子が置いてあるし(未購入の本も読んでいいらしい)、一階にスタバがあって、みんなコーヒーを片手に本選びを楽しんだり、音楽を視聴したりしている。Macを持ち込み仕事している人もいれば、参考書を広げ勉強中の学生さん、あと、こんなところで堂々と英会話のレッスンをしている日本人と外人の2人組もいた。
ここの本屋は、お洒落な本しか置いていない。パッと表紙を見て、カワイイ!面白そう!と手に取ってしまう本ばっかりだ。だからつい長居をしてしまう。
そんな中に……はたして……あるのだろうか、
……あたしの本。
一応、小説を書いている身なので、自分が書いた本が置いてあるのかは気になるところ。広い店内を探す、探す、探す……。
……うん、なかった。
まずもって、文庫のコーナーが棚二枚分しかない。本棚を占領しているのは日本の文豪・夏目漱石や森鴎外、あとは人気作家の宮部みゆき先生や東野圭吾先生の本。ま、ここに並ぶのはおこがましいわなぁ。
店内はそれぞれコーナーごとにフェアがされてて、こないだ来たときはやたらキノコ押しだったのを覚えている。キノコ図鑑、キノコのイラスト集。その横には何故かものすごく可愛い表紙のフェアリー(妖精)図鑑。……なんだか分かるような分からなようなくくりで、その台は盛り付けられていた。
今回はGWに向けた旅行のフェアや、鉄道コーナー本を集めたコーナーが大展開。
本を眺めつつ、もうすぐ春なのだな、とウキウキする。
そんな中、見についたのはパンケーキのコーナー。
東京はいま空前のパンケーキブームだ。
パンケーキの専門店が増え、各地で行列が出来ているというのを耳にする。パンケーキ屋さんの情報を集めたグルメ本、パンケーキを家で作るためのレシピ本。パンケーキだけでこんな種類の本があるなんてびっくり。
そう言えば数日前に、友人Mさんに「パンケーキとホットケーキって一緒でしょ?」と聞かれ、「全然違うって!」と豪語したのを思い出した。
「ホットケーキは甘いやつ、パンケーキはそんなに甘くない感じのやつ」そう自信満々に言ったあたし。「全然違う」と言い張ったわりに説得力のない主張だったけど、きっと私の知らないなにか根本的な違いがあるはずだ!
あたしは「パンケーキとホットケーキ」というレシピ本手に取った。パラパラとめくってみる。
『第一章 基本のパンケーキとホットケーキの作り方』
……ふむふむ。基本をね、基本を教えてちょうだいよ。材料の欄に目を落とす。
「違いはココだけ!」と大きく囲まれた箇所に注目……。
パンケーキ 小麦粉180g 卵1個
ホットケーキ 小麦粉140g 卵2個
……え、
違いはココだけ???
パンケーキの方がちょっと粉っぽいってこと?……そ、それだけ??
……Mさん、すみませんでした。パンケーキとホットケーキにそんなに違いはありません。
そのあと、実用書コーナーで見つけた、ゾンビになった時のハウトゥー本に興味を引かれたあたしは、どの家が侵入しやすいか、集団で人間を襲うにはどういうチームプレーが必要か、などを学び、なんだかどっと疲れたので、二階にあるバー・ラウンジに足を向けた。
2階のラウンジ!
ここがまた、いい感じなのだ。
ソファ席がゆったりしていて、照明が薄暗く落ち着いた雰囲気。隅にグラウンドピアノなんかが置いてあってなんだか素敵。前回来た時、ここでお茶したいなぁと思っていたので、今回こそはと行ってみた。
しかし、値段を見てビックリ。
カプチーノ900円……ですか。
大阪人としては、つい口にしてしまうこのセリフ……え、えらい場所代、高いなぁ。
かなりのオサレ価格に圧倒されたあたしは、結局1階のブックコーナーで「美味しいコーヒーを自宅で淹れる本」の本を1300円で購入して帰った。
家で、安くて美味しいコーヒーを飲みながら、マンガでも読むかー。