第3回 都会水の味


「東京ってさぁ、住むのに不便?」と東京に住む友人に聞いたことがある。あたしが上京する前のはなしだ。
すると大阪出身の彼女は迷うことなく答えてくれた。
「水がちゃう」と。

ミズ、、、水かぁ。
「まぁ、多少まずくても、暮らせんことはないやろう」と、軽く流そうとするあたし。しかし彼女は、世にも恐ろしい光景を見たような形相で言う。
「……髪の毛ぇ、パシパシになんでぇ」
……彼女が言っていたのは飲み水の話ではなく、髪の毛を洗う水のことだった!さすが美女子である。シャワーの水にもこだわるか。

大阪の水の話をしよう。(比較対象がこれしか知らないので、申し訳ない)
大阪の水はぶっちゃけおいしいと思う。うん、クセのないまろやかな水だ。
しかもびっくりすることに蛇口をひねればじゃんじゃん出るのにも関わらず、大阪市の水道水を、500mlのペットボトルに詰められたものが売られている(マジな話)。しかもその水、モンドセレクションで金賞を取ったというお墨付き(マジな話)。
……つまり大阪人はモンドセレクションで、髪の毛を洗っているのだ!(……ん?)

上京初日の夜。ああ、これはたしかにまずいなと、それは歯磨きの時に実感した。
歯を磨き終え、最後のゆすぎ。口に水を含んだその瞬間――口の中が錆びついたような感じになった。ああ、これが都会の水か、とあたしはグジュグジュしながら悟った。
お湯で口をゆすいだりなんかしたら、えらいこっちゃ!口のなかで、もわっと広がる都会水。早くペッてしたくてたまらなくなる。モンドセレクションに慣れてしまっているせいか、この〝ゆすぎ〟の不快感にはいまだに慣れない。

「じゃあ、浄水器を買えばいいじゃん。」
東京人のみなさまはそう思われるであろう。

ちまたにはいろんなタイプの浄水器が出回っている。シンクの端に置くタイプ。蛇口の口の部分に取りつけるタイプ。あと冷蔵庫に入れて保管できるポット型浄水器。
欲しいけど、どれも高いんだよなぁ……。
しかも1回買えばそれでおしまいってわけにはいかなくて、買ってしまうとカートリッジ交換という使命までおまけについてくる。あたし、こういうの苦手。
例えば網戸に貼ってある虫よけの薬剤。交換目安は一カ月と書いてあるが、ゆうに超えてもう三カ月目に突入。だけど、そのまま。(でも、なんか貼っとくだけで、ほんの少しぐらいの効果があるような気がするから貼りっぱなしにしてある。)トイレに置いてる芳香剤なんか、もうとっくに中の液体が無くなっているのに、詰め替え用を買い足さない。(でも、なんかまだ香ってる気がするので無意味に振ったりしてみる)
……そう、〝コスイ〟のよ、大阪人は!
もしもあたしが浄水器を買ったとしよう。1年たっても2年たっても……3年たってもカートリッジは交換しないと思う。そのうち〝まだ浄水〟なのか〝もう水道水〟なのか区別がつかなくなってきて、舌の感覚がマヒしてしまいそう……。
だから、あたしは浄水器を買わない。

「じゃあ、ミネラルウォーターを買いなよ。」
と東京人のみなさまの声が聞こえてくるようだ。

ミネラルウォーターは、いいね、どんな水よりも美味しいね。軟水。硬水。甘い水。すっきりの水。いろんな味わいがあっていいよね。
……でもやっぱりこれも高い!毎日のように買っていたらかなりのコストだ。それに「高い水なんだ」と思ったら、使うのをためらってしまう可能性もある。
あたしはたぶん、飲み水としては躊躇せずにがぶがぶ飲めると思う。お米を炊くのも……ミネラルウォーターを使うだろう。じゃあ、お味噌汁を作るのに使う水は、水道水?それともミネラルウォーター?……じゃあ、パスタをゆでる水はどっち?ゆで卵ゆでる水は?おにぎりを握るのに手を湿らせる用の水は?
……ほ~ら、ボーダーラインの設定、難しいでしょ?そんなジャッジにイチイチ悩む生活はイヤなので、ミネラルウォーターは買いません。

じゃあ、あたしは今どうしているのか。
それはもったいぶって話すほどでもない。……西友に通っているのだ。
あの入り口の近くに置いてある、無料の水。アレだ。西友はあたしの家から歩いて3分。ほぼ毎日のようにそこに通っては水をくみ、えっちらおっちら家まで運んでいる。〝調理用の水〟とがっつり書かれてて、どうやら生で飲むのはおすすめしていない様子。でも、がぶ飲み!……ま、大丈夫やろう。こういう時の合言葉はコレ「死にゃーせんっ!」
重たい、めんどくさいというデメリットはあるけど、タダより安いものはない!お金に余裕が出るまでは、井戸水をくみに行くような古風な生活を送りたいと思う。

これだけ都会水について語っておいてなんだが、実はあたし、まだ東京の水道水をじかに飲んだことがない。こんな記事を書いたからには、本物を飲まなくちゃスジが通らない……よね、やっぱり。

……ということで、ものすんごくテンションが下がっているけど……
今、実際に飲んでみたいと思う。

*  *  *

えー、とりあえず今台所に行って注いできた。洗いたてのコップは洗剤の匂いが付いていて正確な調査が行われないかもしれないので、乾いた食器を使用。

まず、におい。……うん、コップに注ぎたては空気を含んでいるのか、すごくにおいがする。どんなにおいって、水っぽいにおいだ!(水の匂いを、水っぽいと表現する、あたしのボキャブラリーの無さを許して)

で、飲む。

……うん。口に含んだ時に広がる固い感じは、歯磨きの時と変わらない。で、3秒ほどすると……味が変化が?舌が若干ピリピリとしてくる。ここまで深みがあるとは。味を例えるなら……夏、ビーチで浮き輪を口で膨らました時の味かな。分かるでしょ?

ええー。ということで、今回の実験から分かったことは……しばらく西友に通えということです。
はい、それでは皆様、最後までお付き合いありがとうございました~。

第3回 都会水の味” への1件のコメント

  1. こんばんは、十時直子です!
    東京の水も大阪の水みたいに、ペットボトルで売ってるみたいですね。
    こんど大阪帰るとき、お土産で買って帰ろうかな……(笑)

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