第6回 電車にうまく乗れない その2


もしも、入学試験にこんな問題が出たら、あたしは受験に失敗してしまうことだろう。

【問1】
中央線と総武線の違いを述べよ。

なんて難易度が高い問題なんだ……!
ちなみにあたしは高円寺に住んで半年たつ。毎日のように利用しているのだが、この二つの線路の違いが分かっていない。
悩んだ末に、回答欄にはこう書くことだろう。

【回答】
中央線→オレンジ色の電車(割と早い)
総武線→黄色い電車(遅い)

今回は「中央線」「総武線」の違いが分からない、という記事を書こうと思っている。しかし、今書きながら「ネタ選びに失敗した」と後悔している。
「なにが分からないのか」すら分からないのである!
分からない点が漠然としていて、何を書いたらいいのか分からない……!
これは、困った!

電車の違いについては詳しく語れないので(むしろ誰かに熱く語ってほしい!)あたしの東京電車ライフの話をしよう。

新宿から我が町高円寺まで帰るとき、できるだけ中央線に乗るようにしている。「場合によっては総武線が早いよ」と阿佐ヶ谷の友人が教えてくれたが、この「場合」というのが良く分からない。一度「発車時間が早いから」と思って総武線に乗ってみたら、それは「中野止まり」で結局中野で乗り換え。いつもだったら新宿→高円寺まで6分なのに、15分もかかってしまった。

この「中野駅」というのが、なかなかよく分からない駅だ。
(ちなみに東京住まいではない人に説明すると、中野と高円寺は隣同士の駅。電車で2分ほどの短い距離である)
中野で買い物したり、中野のTSUTAYAに行ったりと、割と利用することが多い中野駅。
で、帰り。一駅先の高円寺まで帰ろうと思うのだが、ええっと、どうしたものか。……何番線のどの電車に乗ったらいいのかがまったく分からない。
中野駅は全部で8つもホームがある。中央線、総武線のほかに、東京メトロ東西線も通っている。東京メトロは高円寺には止まらないので、このブルーの電車には乗ってはいけないという知識は一応ある。

分からない時は、彼の登場だ。
〝乗換案内〟先生だ!
まるでドコモのCМの渡辺謙のように私に付き添ってくれている、カレ。
出発駅「中野」到着駅「高円寺」と入力すると「●○分初」の中央線高尾行きに乗れと優しく教えてくれる。中央線は一番端のホームでちょっと遠い。
時計を見ると、時計の針は今まさに「●○分」を指している。
頭上の方から電車がホームに入る音。

……〝乗換案内〟先生は時にスパルタです。

あたしはダッシュで階段を駆け上がる。そんな努力むなしく電車は●○分ちょうどに発車。ハアハア……。乗れなかった……。ハアハア……そりゃ階段ダッシュさせられちゃ、息も切れるわ。
乗換案内は〝現在時刻出発〟で検索すると、ほんとに現在時刻で結果表示しはります。このへんが融通聞かない。頭固いな。

●○分初の電車を見送ってしまったので、もう一度乗換案内検索を検索。すると先生は「◆◇分初の」総武線三鷹行きに乗れと仰る。時計を見る。今度は大丈夫。「◆◇分」にはまだ5分ほど時間がある。しかし、総武線ということはホームが違うやないか。さっき駆け上がった階段をトボトボ降りる。
何番線に乗ればいいのかが分からないので、電光掲示板を見に行く。確認して、またホームに続く階段を上がる。なんかこの作業が……むなしい。さっきも階段上ったばっかり。
なんかこの振り回されてる感が、イヤ。

で、5分ほど待っていると、ホームに電車がやってきた。やっとかー。とベンチから腰を上げる。
しかし……やってきた電車を見てびっくり。

……ブルーの電車だ。

ここは総武線(黄色)のホーム。何故、東西線(ブルー)の電車が……?
さっきも言ったが、東西線は高円寺に止まらない電車だ。乗っちゃいけないという知識だけはある。でもそのブルーの電車は「三鷹行き」と書いてある。どうも、乗換案内先生が指示した電車のようだ。
……乗るべきか、乗らざるべきか。

迷っているうちに、扉が閉まる。
高円寺方面に走っていく、ブルーの電車。見送ったとたんに、乗れば良かったと後悔。

そしてもう一度、乗換案内先生に尋ねます。高円寺に帰りたいのですが、どうすればいいのですか、と。
隣の駅なのに……たった一駅乗りたいだけなのに、なんでこんなに振り回されるのでしょうか。普段なら2分で着くところ、結果何故か15分も足止め。

……どっと疲れました。

恐るべし、中野駅。
歩いて帰った方が早いんちゃうかな?

第5回 うまく電車に乗れない その1


上京組のみなさんは共感していただけると思う。

「東京の電車、ややこしいねん!」

ほんまに東京の電車ってやつは複雑。
よく二時間のサスペンスドラマで、電車の乗換が殺人事件のトリックになっていたりするけど、東京の路線図でトリックを作ったら、複雑すぎてなかなか謎が解けないと思う。二時間ドラマの枠を三時間にしなくてはいけないくらいに複雑になると思う、

正直言ってあたし〝乗換案内〟がないと東京の電車には乗れない。
〝乗換案内〟ってアレです。ジョルダンが提供している、みなさんご存じのネット上の乗換情報サービス。ほかにも〝駅すぱあと〟とか色々あるよね、今は。
「出発駅:高円寺駅  到着駅:渋谷」と入力すれば、どういう経路で行くと早いのか(もしくは安いのか)調べて、到着時刻まで教えてくれる。
ほんとにこれは便利!

どんな近距離であろうが、知っている場所だろうが、電車移動となれば必ず〝乗換案内〟を利用する。
そう、あたしは〝乗換案内〟依存症。
〝乗換案内〟様に「こう行きなさい」とご伝授いただかないと、なんだか怖くて前に進めないほどに、彼を愛している。

彼を愛するのは仕方がない。東京ビギナーのあたしは、土地勘もなければ地名もそう簡単には覚えられない。
「赤羽」という地名は「赤羽橋」の略語だと思っていたし、「青山一丁目」駅の次にあるであろう「青山二丁目」駅を探したこともあった。
こんな東京オンチなあたし。
やはり、すぐそばに〝乗換案内〟様がいなくては生きていけないのだ。

東京で一番恐怖を感じたのは、地下鉄である。

地方出身の人ならだれもが思うはず。
「東京メトロ」と「都営地下鉄」ってなぁに?って。
なんか違うの?地下鉄なんでしょ、一緒でしょ?……そう思っていた。

ちなみに、地元大阪では地下鉄といえば「大阪市営地下鉄」しかない。
あたしは自他ともに認める地下鉄っ子だった。梅田・なんば・心斎橋・天王寺……大阪で行きたい場所はだいたい地下鉄が通っているし、どこに行くのも基本的に地下鉄だった。
それに大阪の地下鉄は碁盤の目のようになっていてるので、とっっってもわかりやすい。
全線各駅停車なので、特急の停車駅の心配なんかもしなくていいし、安心して乗れる。
東京も大阪と同じように主要エリアは地下鉄が張り巡らされている。きっと好きになれるだろうと思っていた。

……しかし、東京・地下鉄ってヤツはかなりツワモノだった。

切符の自動券売機の上の、運賃が書いた路線図を見て、固まるあたし……。

その時あたしは初めての東京一人旅で、観光に来ていた。渋谷にいて美味しい海鮮丼を食べるためにガイドブックに載っている「築地市場」のお店に行きたかった。
でも見上げた路線図に「築地市場」の駅が見当たらない。(※あとから気付いたのだが、あたしが見上げていた路線図は東京メトロの運賃表。「築地市場」は都営地下鉄の駅。だから運賃表に名前がないのはあたり前なのだが、当時のあたしが知るよしもなく……)
「築地市場」が見つからなくて、10分くらいは路線図を見上げていたと思う。
「築地」って駅は見つけたのだが。ガイドブックにある「築地市場」とはまた別の駅っぽい。「築地」駅に行って「築地市場」駅まで歩けばいいのか、とも考えたが駅と駅の距離も分からないし、もちろん道も分からない。もしかしたら、「赤羽」と「赤羽橋」のように、全然違う土地なのかもしれない……

……ということで〝乗換案内〟先生の出番となった。
先生にご指示をお願いすると、2分後に出発予定の「東京メトロ銀座線(浅草行き)」の電車に乗るように、と仰った。あたしは慌てて銀座線に飛び乗る。
なんとか乗り込んだ電車の中で携帯の画面を確認すると、今度は「青山一丁目」駅で都営大江戸線に乗り換えろと、先生が言う。
青山一丁目……3つ目の駅だ。
しかし油断は禁物。駅に着くたびにホームを覗いて駅名を確認。間違えて「青山二丁目」で降りないように、最新の注意を払う。その甲斐あって、なんとか無事に青山一丁目で降りることに成功した。

しかし、降りてからの乗換でまた困ったことになった。
「大江戸線」と書いてある案内板通りに歩き進めていたのだが、何故か目の前に改札がある。

……な、なんで、ここに改札が?

躊躇してするあたし。
分からない。なんで地下鉄から地下鉄の乗換に、一度改札を出ないといけないのか、分からない。
そう、大阪の地下鉄は一度改札をくぐれば、地下鉄のどの線路にも乗ることができる。行き来自由なのだ。改札をくぐるのは、目的駅に着いた時だけ。

……もしかして、東京メトロと都営地下鉄って別会社で、別運賃なのか?ということにここに来て気付いた、あたし。地下鉄移動で二重料金って……なんかぼったくられた気がして、悔しい。
しかし、東京人たちはなんのためらいもなく改札を抜けていく。あたしも仕方なしに改札をくぐった。「東京は恐ろしいところやな」と改めて感じながら……。

話は変わるが、あたしは高円寺に住んでいるので、JR中央線をよく利用する。しかし、ほぼ毎日使っていても……いまだに分からないことだらけだ。
先日は、中野から高円寺に行くのに(たった一駅なのに)うまく乗り継げず、わちゃわちゃしていると、15分もかかってしまった。

その話は、また次回にでも……。お楽しみに。