第10回 このまち大好き。高円寺


 

あけましておめでとうございます。

「東京、アホちゃうか~」も、いつのまにか連載10回目。

いつもゆる~く、楽しく書かせてもらっているこのエッセイ。これからもボチボチやるつもりなので、今年もどうぞひとつ、よろしくお願い申し上げます。

 

 

さて、記念すべき10回目。

あたしが住んでいる高円寺について書きたいと思う。

 

まずはなんで高円寺という街を選んだのか、だ。

 

〝東京でどこに住むのか〟

上京を計画している人にとって、これはなかなか重要な問題であろう。

一般的には「大学の近く」「職場の近く」そんな感じで住む場所を決めるのだろうが、なんせあたしは夢を追って東京に出てくる身。拠点となる場所を自分で決める必要があった。

 

そりゃ、まあ……東京に来たからには、新宿とか六本木とかの『THE・TOKYO』ってとこにも住んでみたい。しかし〝住みたい〟と〝住める〟は別なわけで……。どうにもならないお財布の事情も踏まえ、あたしは〝東京まち探し〟を始めた。

 

 

実は、あたし。昔から下町ってのが大、大、大好き。

大阪の地名を上げれば「天満」とか「谷町六丁目(略して谷六)」とかね。

(※どうでもいい話だが、天満の発音はテ「ン」マね。「ン」にアクセントです。東京の人は「テ」ンマと発音したりするので違和感を感じてしまう)

「天満」というのは、日本一長い天神橋筋商店街がある街。人がたくさんいて賑やかで活気づいている感じが好き。「谷六」は昔ながらの町並みが広がっていて、道を歩いてると匂いがして「あ、ここのうち今日カレーだな」って、そんな生活感を感じられる空気が好き。

はたして東京にも、人情と風情溢れる街はあるのだろうか……。

 

 

東京に住む友人に聞いてみる。

「東京で下町って言ったらどこなん?」

すると返ってきた言葉はこれ。

「浅草とかどぉ?」

……いやいやいや、浅草はないわー。

大否定するあたし。

……だってアレでしょ?浅草って「てやんでぇい、ばかやろー」の街でしょ?

「オイラ、生粋の江戸っ子だぃ!寿司食いネェ!」そんな粋のいい人たちと仲良くお付き合いできる自信がない。

 

 

浅草を却下したところで、別の情報が入ってきた。

「中央線界隈はどう?中野とかさぁ下町だよ……」

ほうほう、どれどれ……と調べてみる。

 

どうやら中央沿線は音楽や演劇をやってる人が多くて、文化の街らしい。調べてみると、家賃相場や物価もそんなに高くないし、結構住みやすそう。新宿までのアクセスもいいし、吉祥寺とか「住みたい街ランキング1位」になっている。

 

……ふ~ん、中央線かぁ。まぁまぁええんちゃう?

 

ということで、下調べをするべく東京にやってきた、あたし。

どこに住むか絞りたかったあたしは、中野から吉祥寺まで各駅停車で降りて、それぞれどんな特徴がある街なのか、実際住めそうなのかを調べてみた。(丸一日かけたが「西荻窪」だけは時間的に回れなかったので、ご了承を)以下がレポートである。

 

 

「中野」

なんでも揃ういい街だと思ったが、中野ブロードウェイのオタク一色な空気にビックリ。サブカルチャーを舐めていた私はノックアウト。この街に呼ばれていない気がして、候補地から外した。

 

「阿佐ヶ谷」

ドラマ「ひとつ屋根の下」の舞台と聞いていただけあって、いい感じの下町。隣の家からカレーの匂いがしそうな感じも高得点。道を歩いていると愛想のいい猫がいて「かわいいー」と近づくと牙を向けられた。猫が怖い、という猫好きのあたしにとってはかなり悪い印象の街となった。

 

「荻窪」

便利な街だろうが、あんまり惹かれなかった。フィーリングかなぁ?駅前が賑やかで、栄え過ぎてるのが好きじゃないのかも、と思った。

 

「吉祥寺」

そりゃみんな住みたいわ、と思う街だった。便利すぎるやん、楽しすぎるやん。でもこの街に住んでしまうと、楽しすぎてお金を使ってしまいそう……。ということで候補から外すことに。

 

 

そして最後に、一番惹かれた「高円寺」のことをじっくり語ろう。

 

まず高円寺の駅に初めて降りた時「あれ、ここ天満?」って思った。なんとも言えないゆる~い空気が流れている。「あ、ここスッピンで歩けるわ」と感じたほどだ。

 

駅前の感じもなんか好き。荻窪みたいな背の高いビルやショッピングモールはない。小さな商店がゴチャゴチャとひしめきあっている感じ。活気のある商店街がいくつもあるのが高得点で、「いらっしゃい、安いよー」と叫んでる八百屋さんがあったのも良かった。

 

そして街を歩いて見つける『ランチ500円』の看板。

「ええっ?!ありえへんっ」

そう、事前に聞いてはいたが、高円寺は物価がめちゃくちゃ安い。安いもん好きの大阪の血が騒ぐ、騒ぐ。

どうやらスーパーの激戦区でもあるらしく食料品も激安だ。大阪でもおなじみの『業務スーパー』。そして『OKストア』とかいう東京で一番安い(ホンマに?)ディスカウントスーパーもある。ちなみに『OKストア』は関西にはないチェーンで、初めて店の前を通った時に「ふざけた名前つけてんなぁ」ってバカにした覚えがある。今じゃ一番お世話になっているスーパーで、OK様には頭が上がらない。

 

 

そんな物価の安さも素晴らしいのだが、

高円寺という街に一番惹かれたのは……

若い人がいっぱい住んでいる、という点。

音楽と古着の街ということもあってか、街を歩いている人たちが若い。店で働いている人たちも若い。もちろんお爺ちゃんお婆ちゃんもいるんだろうが、生き生きとした若い人たちがこの街を作っているんだな、って感じがした。

ここに住んでたら楽しいことが起きそう!

面白い人たちと出会えそう!

そんなワクワク感を抱き、あたしは高円寺に住むことを決めた。

 

 

……で、実際住んでみて、どうだったって?

 

 

それはもう、大正解!

 

高円寺に来てよかったと心の底から思っている。

ちなみに〝住んでみたい街ランキング〟ではなく〝住んで良かった街ランキング〟で高円寺は堂々の第2位を取っている(1位はなんと。サブカルノックアウトの中野)。

街を歩いていて楽しいし、美味しい店も多い。強いて不満を言えば、ツタヤがないことくらいか。

 

そして……住んでる人たちが、ゆるくて優しい。

あたしのマンションから駅までの間に何件かお店があるのだが、毎日歩いているうちになんとなしにお店の人と顔見知りになり、最近じゃ「おはよー」「行ってらっしゃーい」と挨拶を交わすようになった。これも下町ならではの人情だろう。

 

 

最後に、特記すべきことがある。

最近、高円寺に住んでるお友達が何人かできた。紹介してもらって知り合ったのだが、近所に友達が住んでいるというのは楽しいし心強い。

こないだなんか「高円寺会開くよー」って言って声をかけると、22時という明らかに終電を意識していない集合時間にも関わらず、高円寺の改札のところに8人(!)も集まった。自分で誘ったくせに「みんなこんな遅い時間によく来るね……」と言ってしまった。

でもね、ひそかに感動してました、あたし。「みんなで盛り上がろうぜ」って、そんな高円寺の人たちが好き。

この街に住んで良かった、と思った最高の瞬間。

 

 

……どうですか?みなさん、高円寺に住みたくなりましたか?

上京を考えてるかたは高円寺にいらっしゃい!

一緒に飲もう!大歓迎!